法改正
2021/06/21
短時間労働者の被用者保険の適用拡大への実務対応 Part1
2022年10月より、短時間労働者の被用者保険の適用が拡大されます。
弊所の過去のトピックスにて2回紹介しましたが、今回はその内容についてさらに踏み込んで解説します。
・2020年8月1日付トピック「改正年金法が成立・公布されました」
・2021年4月12日付トピック「2022年10月~短時間労働者への社会保険適用拡大」
2020年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し2020年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、6月5日に公布されました。
この改正の趣旨として、「より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等の措置を講ずる。」ことが掲げられています。
その中でも、最も企業に影響がある「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」について、制度がどう変わるのか、2回に分け、法改正の内容を解説していきます。
厚生年金保険に加入する、適用事業所に常時使用される70歳未満の労働者は、厚生年金保険の被保険者となります。
なお、パートタイマー・アルバイトであっても、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である場合も被保険者となります。
また、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、次の5要件を全て満たす場合は、被保険者になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること
特定適用事業所は、現行では、
被保険者の総数(短時間労働者を除く)が500人超の事業所に適用されていますが、法改正によって次のように適用範囲が拡大されていきます。
①
2022年10月1日から 被保険者の総数が100人超の事業所
②
2024年10月1日から 被保険者の総数が150人超の事業所
拡大に伴い、新たに社会保険に加入することとなる短時間労働者は①の時点で45万人増加、②の時点でさらに20万人増加(①②合計で65万人)と言われています。
(参考までに人数要件撤廃となった場合は、新たに125万人増加すると言われています。)
被保険者の総数についての取り扱いについては、平成28年に日本年金機構から出されたQ&Aが参考になります。
※当時のQ&Aが改正後においても適用されることが想定されるので、総数について500名を100名に置き換えて、以下に記載します。
Q:使用する被保険者の総数が常時100人を超えるか否かの判定は、適用事業所ごとに行うのか。
A:使用する被保険者の総数が常時100人を超えるか否かの判断は企業ごとに行いますが、具体的には以下のいずれかの考え方で判定します。
法人事業所の場合は、同一法人番号を有するすべての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時100人を超えるか否かによって判定します。
個人事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時100人を超えるか否かによって判定します 。 |
要するに、被保険者の総数については、単に従業員の数ではなく、厚生年金保険の被保険者数(適用拡大となる前の被保険者数)で判断することとなります。
なお、被保険者の総数が常時100人を超えるとは、以下の状態を指します。
- 法人事業所の場合は、同一の法人番号を有するすべての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12カ月のうち6カ月以上100人を超えることが見込まれる場合を指します。
- 個人事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12カ月のうち6カ月以上100人を超えることが見込まれる場合を指します。
日本年金機構は、現在、厚生年金の被保険者の総数が、直近11カ月のうち5カ月500人を超えたことが確認できた場合、対象の適用事業所に対して、「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」を送付することとなっています(法人事業所の場合は、同一の法人番号を有するすべての適用事業所に対してお知らせを送付します)。
特定適用事業所になった後に、従業員が退職等で減少し、被保険者の総数が500名以下となり人数要件を下回った場合であっても、引き続き特定適用事業所として取り扱われます。
※使用される被保険者の4分の3以上の同意を得て、特定適用事業所不該当届を提出した場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることとなります。
この取扱いは改正後も同様に行われると想定されます。
次回は、改正後の社会保険の適用要件について詳しく確認し、改正までの実務対応を解説していきます。
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