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法改正 2020/05/22

パワーハラスメント対策が事業主の義務となります!

これまで、セクシャルハラスメント(セクハラ)やマタニティハラスメント(マタハラ)を規制する法律はありましたが、パワーハラスメント(パワハラ)を規制する法律はありませんでした。
2020年6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化され、事業主のパワーハラスメント防止措置が義務化されます。
※中小企業は2022年4月1日からの義務化とされ、それまでは努力義務となります。
今回は、このパワハラの法制化により、何が変わるのかをご説明いたします。
 

1.パワハラとは?

職場における「パワーハラスメント」とは、以下3つの要素をすべて満たすものをいいます。

①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
③労働者の就業環境が害されたこと(身体的、精神的苦痛を与えること)

※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません

「職場」とは、労働者(※)が普段就業している場所だけでなく、業務を遂行する場所については、職場に含むものとされます。
また、パワハラといえば、上司と部下などの関係により行われるというイメージが強いですが、上記①でいう「優越的な関係」とは、業務上必要な知識や経験を有していて、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難なような場合も含まれます。
例えば、別の部署より異動してきた上司に対して、部下がこれまでの知識・経験等を背景にパワハラを行うことも考えられます。
 ※「労働者」とは、正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいいます。
 

2.法制化の対応のポイント

パワハラの法制化によって、事業主はパワハラ防止のために必要な措置を講じることが義務付けられました。
事業主がとる措置を簡単にまとめると、以下のとおりとなります。

(1)事業主の方針を明確化して周知する
(2)就業規則を整備する
(3)相談窓口の設置、相談フローの整備
(4)社内研修の実施(管理職向け、一般向けと分けることも効果的)


措置内容の詳細は、以下のとおりです。
【事業主の責務】
①パワハラを行ってはならないこと等これに起因する問題について労働者の関心と理解を深めること
②雇用する労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと
③事業主自身がハラスメント問題に関する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと

【パワハラの防止のために講ずべき措置】
◇事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
① パワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
◇相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じて適切に対応できるようにすること
◇パワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること
◇そのほか併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
 
2020年1月15日には、パワハラに関して雇用管理上講ずべき措置等について定めた指針等が告示されています。
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf

3.まとめ

ハラスメントの問題はどのような業界・業種でも起こり得るもので、問題を放置しておくと職場環境の崩壊にもつながる恐れがあります。平成30年に労働局へ相談があったパワハラを含むいじめ・いやがらせの件数は8万2000件を上回っています。
このような状況を受けて法制化されたパワハラ防止のための対策ですが、事業主には準備することが沢山あります。ハラスメントに対する方針決定、相談窓口の設置、相談窓口担当者の研修、各規程整備、従業員研修。当事務所ではこのようなハラスメント防止に関する対策をバックアップしています。
従業員がいきいきと仕事ができる職場を作るためにも、ハラスメント対策は経営の最重要課題になってくることでしょう。

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