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法改正 2020/02/06
【新36協定届】限度時間を超えて労働させる労働者に対する「健康及び福祉を確保するための措置」について
中小企業でも2020年4月1日から新様式で36協定の締結が必要
2019年4月1日より時間外労働の上限が罰則付きで法律に定められることとなりました。
法改正にあたって、36協定で定める必要のある項目が変更となったため、36協定届の様式が改められました。
中小企業への上限適用は、1年間の猶予がありましたが、いよいよ2020年4月1日より適用されることになり、2020年4月1日以降に締結する分については、新しい様式の36協定届(以下、新36協定届)での届け出が必要となります。
※大企業については、すでに2019年4月1日以降締結した36協定届から適用が開始されています。
厚生労働省は法改正を前に、2018年に「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」(以下、指針)を新たに策定しました。
この指針では、36協定 で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項が示され、第8条では、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を協定することが望ましいとされています。(望ましいとなっていますが、特別条項付きの36協定届を届け出る場合は、記載がないと36協定届を労働基準監督署が受理してくれません)
参照:厚生労働省HP「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/000350259.pdf
今回は、この限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保する措置について考えていきます。
限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保するための措置
1 | 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること |
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2 | 労働基準法第37条第4項に既定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること |
3 | 就業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること |
4 | 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること |
5 | 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること |
6 | 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること |
7 | 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること |
8 | 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること |
9 | 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保険指導を受けさせること |
10 | その他 |
健康福祉確保措置の具体例
1.労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること
この項目では労働安全衛生法の定めが参考となり、労働安全衛生法では「1ヵ月の法定時間外労働が80時間を超えた場合、従業員からの申出にもとづいて、会社は医師による面接指導を実施しなければならない」と定められていますので、法律を上回る内容にしなければ、意味がありません。
(具体的内容の例)
・1ヵ月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、従業員からの申出にもとづいて、会社は医師による面接指導を実施
・1ヵ月の法定時間外労働が80時間を超えた場合、超えた者に対して、会社は医師による面接指導を実施
2.労働基準法第37条第4項に既定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること
「労働基準法第37条第4項に既定する時刻」とは、午後10時から午前5時までの間の時刻(いわゆる「深夜労働」)をいいます。
深夜労働は、身体にかかる負担が大きいため、会社として、労働者の身体への配慮をし、その回数を制限することが有効です。
法律上、深夜労働を月に何回以内にしなければならないという制限はありません。
(具体的内容の例)
・深夜労働を行う回数の上限を、1ヵ月に4回以内とする
※深夜労働が発生しない事業所や深夜労働のみの事業所には適しません。
3.終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること
「勤務間インターバル」の制度を設けることを意味します。
「勤務間インターバル」とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻との間に、一定時間の休息時間を確保する制度のことです。
法律上、設けるインターバルは何時間以上でなければならないという制限はありません。
(具体的内容の例)
・終業から始業までに9時間以上の継続した休息時間を確保する
4.労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること
法定休日に働いた場合、割増賃金を支払う義務はありますが、代休をとることまでは求められていません。
しかし、休みなく連続で働くことは、当然心身に負担がかかります。
ただし、代償休日や特別休暇の日数について、「何日以上とらせなければならない」というような法律上の定めはありません。
(具体的内容の例)
・7日以上連続で勤務した場合には、その翌日に1日代休をとる
・月に4日以上、所定休日に出勤した場合には、5日の特別休暇を与える
5.労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること
労働安全衛生法上、受診要件を満たす労働者に対しては、1年に1回、定期健康診断を受診させる義務があります。この措置は、勤務日数や時間外労働の多い従業員に対して、個別に健康診断を実施することを意味します。
(具体的内容の例)
・時間外労働の時間数が3ヵ月平均で45時間を超えた労働者については、速やかに臨時に健康診断を実施する
6.年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
法律上、何日以上の有給休暇が「まとまった日数」に該当するのか、「何日以上にしなければならないのか」明らかにはされていません。また、まとまった日数というからには、1日の有給休暇では当然足りません。
(具体的内容の例)
・連続3日間の年次有給休暇を与える
7.心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
「相談窓口」とは、労働者が心身の問題を相談できる窓口を意味します。窓口は、社内でも社外に設置しても構いません。
(具体的内容の例)
・総務部に心とからだの相談窓口を設置する
ちなみに、厚生労働省が公開している「改正労働基準法に関するQ&A」では、この相談窓口について以下のように留意するよう述べられています。
(Q)指針に示された健康確保措置のうち、心とからだの健康問題についての相談窓口を設置することについて、相談窓口の設置さえ行えば、措置を果たしたことになるのでしょうか。
また、この場合、どのような内容について記録を保存すればよいでしょうか。
(A)心とからだの健康問題についての相談窓口については、それを設置することにより、法令上の義務を果たしたことになります。その際、労働者に対しては、相談窓口が設置されている旨を十分周知し、当該窓口が効果的に機能するよう留意してください。
また、この場合の記録の保存については、相談窓口を設置し、労働者に周知した旨の記録を保存するとともに、当該 36 協定の有効期間中に受け付けた相談件数に関する記録も併せて保存してください。
参照:厚生労働省HP「改正労働基準法Q&A」
https://www.mhlw.go.jp/content/000487097.pdf
8.労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
働き過ぎによって心身に支障が生じる恐れがあると会社が判断した場合には、休職や人事異動等を通じて、労働者を適切な業務や部署に異動することを意味します。
選択することは可能ではありますが、実務上運用するのは現実的ではないでしょう。
9.必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること
産業医は原則として50人以上の事業場について選任するものであり、労働者数が少なく産業医を選任していない会社にとっては、選択しにくい項目であるといえます。
(具体的内容の例)
・1ヵ月の時間外労働が50時間を超えた労働者に対しては、産業医の保健指導を行うこと
10.その他
考えられる取り組みの具体例としては、職場における労働時間対策会議の実施等があげられます。
健康及び福祉を確保するための措置は、いつどのタイミングで行うべきか
最後に、健康及び福祉を確保するための措置は、労働者が限度時間を超えてから、いつどのタイミングで行ったらよいのでしょうか。
先にとり上げた「改正労働基準法に関するQ&A」においては、以下のとおり記載されています。
(Q)36 協定の協定事項である「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」(則第 17 条第1項第5号)は、限度時間を超えるたびに講じる必要がありますか。また、限度時間を超えてからどの程度の期間内に措置を実施すべきですか。
(A)「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」(則第 17 条第1項第5号)は、原則として、限度時間を超えるたびに講じていただく必要があります。また、当該措置の実施時期については、措置の内容によっても異なりますが、例えば、医師による面接指導については、1か月の時間外労働時間を算定した日(賃金締切日等)から概ね1か月以内に講じていただくことが望ましいです。
上記1~10であげた例はあくまでも一例です。
実態に即して運用しなければ全く意味がありません。まだ間に合います。
労使で十分協議して、会社の実態に即した「健康及び福祉を確保するための措置内容」を決定し、
確実に運用していきましょう。
ご不明な点がありましたら、弊所までお気軽にお尋ねください。
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